都会のブラックホール
・三軒茶屋――かつて大山街道の宿場町として栄えたこの街は、渋谷からわずか二駅という至近距離にありながら、時間の流れが異なる次元に存在するかのようです。
・本作「都会のブラックホール」は、薄暮の三茶が見せる二つの顔を二十三点の組み写真で捉えました。
・キャロットタワーを背に、エコー仲見世から三番街へと続く路地では、点灯し始めた街路灯が昭和の記憶を照らし出します。観光客と地元の人々が行き交う中、十羽ほどの鳩が路地に佇む姿には、この街の優しさが凝縮されています。
・特に着目したのは、三番街西側に残る古びた路地裏です。再開発が進む東京にあって、ここは意図的に近代化の波を拒むかのように、戦後の面影を色濃く残しています。まさに都会の喧騒を吸い込むブラックホールのように、時間を湾曲させながら存在し続けるこの空間。下町情緒と都会的センスが共存する三茶の本質が、ここに凝縮されているのです。